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てにすまん 高西ともブログ

忘れられない社会人デビュー戦 [過去の思い出]

投稿日時:2012/06/28(木) 02:00

高校卒業して18才で入社したテニスコーチの会社には
選手兼コーチとして試合に出場しながらコーチ業をしている
人がたくさん在籍していた。
入社する前に面接で上京したときにも、色んなコーチと
練習させてもらったんだけど、全然歯が立たなかった。
これは凄い環境に身を置くことになるな・・・と気合入れて
入社したんだけど、初めてちゃんと1セットマッチで試合を
させてもらったのは、入社して1週間も経たないある日曜の
午後だった。
 
相手は誰かというと、先輩も先輩、大先輩のコーチで
俺より20才も年上の方。
おまけに身長がかなり低いし、使っているラケットもかなり
古いときた。
「ん?高西って言うの?よろしく。」
温厚そうにニコニコしているこのおじさんコーチを見て
俺は「この人には勝てる」そう思った。
試合前のアップの段階でもさほど速いショットは打たない。
俺の方が何倍も迫力あるぜ!!とばかりに、練習の
段階で俺のパワーショットを見せつけてやった。
 
しかし・・・実際試合が始まると、見事なまでに完敗。
6-0で負けたんだけど、取ったポイント数も数ポイント。
デュースにも持ち込めなかったのだ。
ま、見た目は小さくて古臭いラケットを持っているオジサン
なので、一見弱そうに見えるのだが、実際には
ベテランテニスでしっかり全日本に出場するほどの
実力を持った方で、単に俺の見る目が無さ過ぎたってのもある。
しかしその方、その試合後に今やった試合のことで話を
してくれたんだけど、そのテニスの話が素晴らしかったのだ。
 
試合後、俺の悪いところを徹底的に言われて怒られると
思っていたら、その方、叱るどころか自分の欠点の話を
ずっとしてくれたのだ。
例えばフォアハンドが弱いから、無理させないでしっかりと
ロブだけはきっちり上げられるようにしておいた・・・とか、
速いショットが打てなくて困っているから、何とか自分の
ショットを速く見せようとスライス混ぜるなどして、色々
工夫してみた・・・とかね。
とにかく自分には欠点がたくさんあるから、それを
どう扱うか考えてプレーしたということを聞かせてくれた。
 
その話、とても素晴らしかったのだが、25才を過ぎる
頃になってやっとジワジワ心の中に染みてきたのだ。
それまでは自分の長所をいかに伸ばし、それを見せ付けて
戦うことばかり考えてやってきた。
でもテニスってそれも必要だけど、当然長所があれば
短所もある。
その狙われる短所をどう扱っていくか・・・が大事だし、
その短所が簡単には崩れないというのは、実は長所が凄いって
ことよりもポイントに結びついたりするのだ。
 
でも、残念ながら入社して初のマッチ練習を、完膚なきまでに
叩きのめされて0-6で終えた俺は、そんなありがたいお話を
頭の中で噛み砕いて理解するほど余裕はなく。
「なんでこんな人に負けたんだ!見てろ!俺のフォアを
もっと強いショットにしてやる!!」って思っていたんだよ。
全く短所と向き合い、それをどう扱うかなんて考えもしなかった。
ま、そういう事も大事だけどね。
 
でも、その時に感動してすぐ取り入れたこともある。
それはその時俺に話をしてくれた態度。
メチャクチャなテニスやって、結局ミスばかりだった俺は
「絶対怒られる」って思っていた。
しかしそんな俺に対して、「もっとこうやれよ!!」っていう
言い方ではなく、「俺だったらこうするんだけどね」って
いう感じの伝え方。
命令口調ではなく、一つの提案をしてそれを選んでもらう
というやり方は、アドバイスを受ける側としてはとても印象に
残ったのだ。
 
テニスは見た目じゃない・・・というのも学んだし、
オジサンって手強いんだって事も理解した。
とにかく、上京して初めてのマッチ練習は多くの事を
学ぶことが出来た記念すべき戦いでありました。

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