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てにすまん 高西ともブログ

青森遠征ドッキリ [過去の思い出]

投稿日時:2012/08/09(木) 02:41

現役の頃、テニスの遠征は楽しかった。
大会に出場することはワクワク感があったし、そういった
緊張感の中で勝ち進むことが出来れば、なお嬉しいからね。
それから、ずっと選手活動を続けていると、選手仲間も
増えてくるので、そういった選手達と試合した後練習したり
ご飯に行ったり温泉に行ったりすることもまた遠征の醍醐味だった。
 
そんな遠征で青森に行った時の話。
大会会場はアジア大会用に作られた20面以上ある立派な
施設で、宿泊も可能なので出場した選手はそこに滞在していた。
というより、周りは殆ど何も無い田舎なので、試合、練習、
食事・・・とその施設に缶詰状態。
皆、飛行機で来たからちょっと外へドライブって訳にもいかない。
毎晩、食事終わった後は選手達で集まってトランプしたり
雑談したりするしか楽しみはなかった。
 
試合が進んでいくと当然負けた選手は帰っていくので、
段々人数は減っていく。
そうなると面倒なのが翌朝、試合前に行うアップの相手の確保。
だいたい毎朝同じ相手と試合前に練習するんだけど、その相手が
負けて帰ってしまったら、勝ち残っている中から新しい相手を
探さないといけない。
その大会でも勝ち残り、明日は準々決勝という日の夜、
俺と後輩の岸本選手、それから当時荏原でコーチをしていた
一つ歳下の大西選手と3人で集まって、長い暇な夜を一緒に
過ごしていたんだけど、そこで翌日朝の練習相手の話になった。
 
俺は岸本選手と一緒に練習すると決めていたのだが、大西選手は
朝の練習相手が決まっていないらしく「誰かいませんかね?」と
我々に聞いてきた。
まだ勝ち残っている選手をピックアップしていくと、当時リコーに
所属していた八木選手がもしかしたら探しているかも・・・という話に。
しかし大西選手はそこで「ちょっと八木さんって怖くないですか?」と
言ってきたのだ。
確かにキリッとした表情でクールな八木選手は、本人のことを
あまり知らない選手には、そう見えなくも無い。
「いや、八木さん無茶苦茶良い人ですよ。」と岸本選手。
「そう?でもちょっとびびるな~」と大西選手。
 
そこで岸本、チラッと俺の方を見てから
「じゃあ今から八木さんに電話をかけるので、大西さんが直接八木さんと
話して下さいよ」と彼はおもむろに携帯電話を取り出した。
この「電話をかける」と岸本が言ってチラッと俺の方を見る
というのは当時、俺たちがよくやっていたイタズラの合図。
その合図と同時に俺は部屋をソっと出て外に行って外でスタンバイ
していると、案の定岸本から俺の携帯に電話が掛かってきた。
「おぉ、八木だけど・・・」と俺はぶっきらぼうに電話に出る。
「あ、あの僕、大西です。明日の朝の練習相手を探しているので
岸本君の電話を借りて電話させてもらったのですが・・・」
電話の向こうにはビビリながら喋る大西選手の声が。
大西選手は完全に俺の声を八木選手と信じきっている。
八木選手本人はこんな無愛想じゃないのに、大西選手が
勝手なイメージを持っているので、それに合わせて俺は
だるそうな声で話を続けた。
 
「おぉ、いいよ。じゃあ明日の朝、7時にコートで。」と俺。
「え!?7時ですか?試合は10時からですよ!?」
驚く大西選手。
だって10時試合スタートだったら、早くても9時頃にアップを
始めるのが普通だからね。
しかし、
「八木さんだったら朝7時から有り得るな~」
大西選手の声の後ろで岸本も大西選手を信じ込ませようと、
俺の話に合わせてくれる。
「わ、分かりました。でも朝7時だとコートの管理人がいないので、
ネットがまだ無いと思うのですが・・・」と大西選手。
「おぉ、ネットが無くてもいいよ。」と、八木選手に扮した俺。
「えぇ!!ネットが無いコートでもいいんですか!!???」と大西選手。
「八木さんなら、ネットが無くても練習しそうだな~」と岸本の声。
「分かりました!!じゃあ明日の朝、7時からネット無しで
練習お願いします!!!では失礼します!!」
 
電話を切った後、俺は二人のいる部屋に戻ったのだが、そこには
今一つ状況が飲み込めなくて呆然と突っ立っている大西選手と
一生懸命笑いをこらえている岸本がいた。
「大西は明日の練習相手、どうなった?」と俺が大西選手に尋ねると
「八木さんが明日の朝7時から、ネット無いコートで練習してくれるって
言ってくれたんですが、これどう思います?」
「いやぁ、八木君ならストイックな選手だから有り得るよ、ねぇ岸本?」
「そうですね~、有り得ますねぇ~」
 
遠征は悔しい思い出も多いが、それ以上に楽しい印象が残っている。
普段、試合でも対戦する機会の多い選手同士だからこそ、オフの時は
楽しく過ごせる仲間なのだ。
結局大西選手にはこの後、ネタばらし。
そのままだと朝7時にコートへ行きそうだったからね。
おかげで一生の思い出に残った青森遠征となりました。

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