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てにすまん 高西ともブログ 2013/4

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結局、挫折恐怖症なんだよ。

[考え方] 投稿日時:2013/04/30(火) 14:49

よくこういうレッスン依頼が来る。
「プロのテニス選手になりたいです。一度観てください」
もちろん、高い志を持って取り組む姿勢は立派だし尊敬する。
是非ともその夢が叶うように・・・と一度レッスン依頼を
請けるのだがテニスを観てみると、何とも荒削りで安定感がない
プレーの若手選手が多い。
 
「今までの戦績は?現在、どういう選手活動してるの?」
改めてそういうタイプの選手に話を聞いてみると、試合は殆ど
出ていないし、練習場所も無いうえに練習相手もいないパターンが殆ど。
「でも僕はテニスのプロになるって決めたんです!」
そういって純粋そうな目を向けては来るのだが、残念ながら
俺にはその目が純粋というよりも、何も分かっちゃいない無知さを
象徴しているようにしか映らない。
こういうタイプの依頼が年に一回は来るのだ。
 
先程も言ったように、テニスを始めたばかりの人がプロの
テニス選手を目指すことは大いに奨励する。
ショットの質だけじゃなく、配球センスやフットワーク、体力、そして
忍耐力などメンタルなんかで試合を決めることが可能な
テニスというスポーツは、遅くから始めても強くなれる可能性はあるからね。
夢と希望を持って選手活動をした方が上達は早いに決まっている。
でも俺のところに依頼に来るプロ志望の若手選手達の多くは
ちょっと違うんだよ。
彼らは恐れて避けていることがあるのだ。
それは挫折・・・である。
 
いや、挫折をしなさい・・・とはわざわざ言わないけど、挫折って
選手活動をしていたら避けて通れないでしょ?
一生懸命練習したのに、それが試合で出来なかったり、全然
通用しなかったりした時のショックや、同じレベルだったライバルとか
自分より弱かった選手なんかが良い戦績上げて自分よりランキングを
上げていく悔しさは、選手活動の中で重くのしかかってくるし、
そういう感情的になりそうな要素が余計に自分のプレーを
ダメにしていくことも多々ある。
そういう挫折って選手皆経験してきたことなんだけど、それでも
諦めず、腐らず練習して試合に出続けることで自分のテニスを
確立していくことが出来るのだ。
 
なので、「プロの選手になりたいんです!」と本気で思う若手選手は
まず、俺のレッスンを依頼する前にテニスの試合にトコトン出まくること、
それから自分と同じレベルでも良いから、選手仲間をたくさん作り
ひたすら練習をすること。
試合と練習を嫌というほど繰り返せば、大抵壁にぶち当たる。
悔しくてイライラすることも多いからね。
でもそれでも自分のテニスを信じられるのであれば、そこから
また立ち上がって前に進むためにも、それまでの失敗パターンや
成功パターンを思い出して学習し、そこから次の行動を考えながら
引き続き試合と練習の日々を繰り返すことが出来る。
 
そしてそういう選手にレッスンすると、俺がアドバイスしたり
提案したりした時に、それがその選手にとって効果があるのかどうか、
その選手自身で判断できるので話し合いながらレッスンができる。
でも試合経験も練習相手もないという選手は自分の口からは
何も語れない。
現実を語れないから、口にする言葉は、遠い未来の大き過ぎる
夢ばかり。
それって現実逃避なんじゃないの?
 
かく言う俺も、昔は海外行けば強くなる・・・なんて思ったよ。
日本で練習して試合してもなかなか勝てないから、何か
新たなものを取り入れたら化学反応みたいに
スーパーテニスプレーヤーに変身出来たりして・・・って思った。
でも海外に行くだけじゃあダメだった。
ちゃんと自分のテニスのことを知っていないと化学反応どころか
積み重ねることさえままならなかったからね。
将来プロの選手に憧れている人は、もう一度自分の選手活動を
見直してごらん。
自分のテニスを花開かせてくれる人を探すのも重要だけど、
そういう人に出会った時に、自分のテニスをとことん語れるような
試合経験、練習環境を用意しておかないといけないよ。
「その前に、もっと試合とか練習しないと話になんないよ!」
なんてことを言われないように。

夢と希望と・・・金が必要。

[過去の思い出] 投稿日時:2013/04/25(木) 11:47

テニス選手で成功したいって思って頑張っている人は
多いけど、戦績上げてランキング伸ばしていくことって
大変なことである。
練習も近所のコートでやっているだけじゃダメで、
ちゃんとレベルの高い選手が集まる場所で、ちゃんとした
指導者に見てもらわないとなかなか芽は出にくい。
試合も出場し続けないといけないんだけど、それこそ
出場する大会を選んで出ないといけないでしょ?
そうなると家から通える会場だけじゃなくて、遠征で何日も
泊まって戦わなきゃいけい場合もあるし、何大会もハシゴして
遠征を続けなきゃいけないこともある。
飛行機で海外にも飛び出したりすることなんかも必要になってくる。
 
そうなると大変になってくるのがお金だ。
日本で賞金かかったオープン大会に出場するだけでも
予選で6000円~8000円くらい。
本戦に勝ち上がれば差額が更に5000円以上発生する。
本戦に上がれば賞金がもらえるけど、エントリーフィーを
取り返すには大会にもよるけど2,3回戦まで勝ち上がらないと
いけないし、そうなると今度は宿泊費や食事代の滞在費も
かかってくる。
もちろん交通費もかかるしね。
ITFなんかの国際大会はもう少し予選出場料金は安かった
けど、こちらは本戦に上がるのがキツいから賞金で
ペイバックされるのを期待するのは更に難しくなる。
 
練習場所としてスクールやアカデミーに所属するのも、当然
通常の一般スクールよりもお金が掛かる。
だって練習時間は3時間以上欲しいし、それを週に何日も続けなきゃ
いけないうえに、1面あたりの使用人数も、選手はシングルスをメインで
行うことを考えるとたくさんは入れられない。
コーチも経験あるコーチが必要になるから人件費も掛かる。
そうなると月謝もその分上乗せされるでしょ?
とにかく選手として頑張り続けるにはお金が掛かるのだ。
 
俺なんか選手活動を本格的に始めたのはスクールコーチとして
就職してからだから、当初はまだお金は掛からなかった。
コートはタダで使えたし、先輩コーチは皆俺より強かったうえに
俺にタダでコーチしてくれたからね。
でもその環境で続けていくにも限界はあった。
先輩と練習試合して手応えを掴んだり、大会でも少しずつ
結果を残し始めた時点で、次の環境を探し始めた。
まずは安易な考えでアメリカに渡った。
アメリカに行くと強くなると思ったからね。
このアメリカは3ヶ月間の滞在だったんだけど、費用は
およそ60万円。
でも所属していた会社が往復チケット代を援助してくれたのと、
アメリカでの練習場所は全て大学のテニスチームに混ぜてもらったから
これはかなり安い金額なんだけど、当時21歳の俺の給料から考えると
凄い出費であった。
 
帰国後は、試合出場回数を増やし、と同時に練習場所は会社の
スクールコートだけじゃなく、国内のトップ選手も集まるアカデミーに
通うようにした。
練習は一回5000円で、それを週2回か3回通った。
その為の車も購入したし、ラケットやシューズも「何でもいいや」って
思っていたのをちゃんと選んで購入するようになった。
出費は急激に増えていった。
 
そのおかげで急激にテニスを上達させることが出来たんだけど、
そうなると体がついてこない・・・ということで、トレーナーを見付けて
トレーニングを本格的にスタート。
もちろんこれも有料。
サプリメントなんかも摂取し始めたので、トレーニング関係で
月2万円弱の出費。
技術だけじゃなく、身体的なパフォーマンスも向上してくると更に
目標が高くなり「じゃあ、1年くらい海外で・・・」ということで、今度は
安易な考えじゃなく、しっかり計画を立て色んな人に助言してもらって
スペインへ行くことになった。
1年間スペインのアカデミーに所属して練習したり遠征行ったり
したんだけど、その費用は飛行機代、滞在費全て入れて300万円。
しかし、当時は物価がむちゃくちゃ安かったから、今現在はこれの
1.5倍くらいかも。
 
そしてその2年後に再度スペインで3ヶ月間の選手活動。
今度は練習よりも遠征中心にして、よりハイレベルな経験を求めて
行ったんだけど、この時掛かったのは100万円以上。
運良くある日本人選手のアパートに「料理係」としてタダで
泊めてもらったから、それでもかなり安くなったんだけど、やっぱり
遠征に行くとホテル代、飯代、交通費、帯同コーチのお金が掛かったよ。
 
結局選手活動を引退するまでにいくら使ったかザッと
計算したんだけど1000万円以上は使っている。
結局選手活動はお金が掛かるんだよ。
それでも選手ってお金を惜しんじゃいけない。
ケチった結果、新しい世界が見えなくなってしまったら成長が止まって
しまうだけでなく、自分の内面ばかり見てしまうようになり自分の
ダメな部分ばかりを感じ取ってしまい、魅力のない選手になってしまう。
次に進む道、そこに向かう方法、成功するチャンスも今いる場所ではなく
動きまくって探さないと出会わないからね。
結局俺は賞金で回収したのは100万円にも満たなかったから成功者とは
言い難いけど、それ以上のものを得たと思っている。
それから実際トッププロになって稼いでいる選手たちも、当然稼ぐ前は自分の
テニスへ俺以上に投資しているからね。
 
もちろん無駄遣いをしてはいけない。
お金を掛けた分だけ、世界が広がったかちゃんと見極めないといけない。
そしてそのお金が出たところに感謝して、結果を見せないといけない。
俺の場合は大半が自分で稼いだお金だけど、会社からの援助もあったし
親の援助もあったから、そこへ感謝の気持ちを示すことと結果の報告だね。
お金が惜しいんだったら、今すぐ選手活動は辞めた方が良いかも。
海外に行けとは言わないが、とにかく日々の選手活動で常に新鮮且つ
新たな道が発見出来る環境を作って欲しい。
その為のお金を惜しむなよ。

楽チン&安定感抜群サーブの正体とは!?

[技術【サーブ】] 投稿日時:2013/04/23(火) 12:47

サーブとストロークって似ていると思う。
頭の上にボールを投げて打つサーブは、当然ストロークと
打ち方は違ってくるけど、流れというか構成は基本的に
同じなんだよ。
例えばストロークでのテイクバックは、サーブでは
ワインドアップにあたるし、ストロークでのラケットダウンも
サーブでは背中の後ろに一旦落とすから同じなんだよね。
しかもそのラケットダウン状態から軸足で地面を蹴ることを
キッカケにラケットが一気に打点へ振り抜かれるという点も
同じなんだよね。
ビビった時に軸足が踏ん張れなくて腰砕けになってしまったり
打点を低く落としてしまう部分まで似てるでしょ?
 
これらサーブとの共通点って、トップスピン系のストロークと
なんだけど、ストロークってトップスピンだけじゃない。
そう、アンダースピンという打ち方もあるでしょ?
そんなアンダースピンのストロークと共通したサーブって
あるのかと言うと、実はあるんだよ。
しかもこのアンダースピン系サーブって試合会場でも
頻繁に見かけるんだよね。
でもその試合会場って市民大会とか草トーナメントとか。
で、そういうサーブを使っている選手の特徴って、どちらかというと
年配の人達なんだよ。
トッププロの選手なんかはあまり使わないテクニックなのだ。
 
アンダースピン系の回転とになるので、ボールを打つ動作は
通常のラケットダウン状態で力を貯めて、そこから一気に
軸足のキックで打ちに行くというより、軸足に乗っかっておいて
前の方に投げたボールをラケットで押さえつけに行くといった感じ。
そうなると打ち方で似ているのはストロークのアンダースピンより
フォアボレーに似ているかな。
しかも相手ショットが浮いた時に打つチャンスボレー。
軸足で力を貯める時間も、通常のサーブより労力が小さいので
少しで済むし、その分トスも高く上げる必要がないからちょっと
クイックサーブ気味になるのが特徴。
それらをまとめると、アンダースピン系サーブとは、体の前へ
クイックサーブ気味の早いタイミングのトスを上げておいて、
それを軸足にしっかり乗っかりながらフォアのハイボレーを
するように押さえつけて打つサーブなのである。
 
なんてったって、アンダースピンの良いところは
小さな労力で済むということ。
コンパクトなスィングなのにしっかりボールを飛ばせる。
それがサーブにも当てはまる訳だから、安定感も抜群だし
その分、コースもしっかり狙いやすい。
威力は出しにくいけど、そこそこのスピードは出せるし、
何より伸びがあるから、威力以上の効果をもたらすことも多い。
アンダースピンのストロークでアプローチをしてボレーに行く人って
多いでしょ?
だからこのアンダースピン系のサーブも、サーブ&ボレーの人が
よく使っていたりするんだよ。
 
もちろんサーブを速くしていくことも重要だけど、それ以上に
安定させること、きっちりコースを狙えるようにすること、それから
サーブの後のショットに繋げることって大事。
威力はちょっと落ちるけど、このアンダースピン系サーブを
使ってスムーズに自分がサービスゲームの時のポイントを
スタートさせたい。
あっ、そう言えばデュースサイドのサーブでワイドに切れていく
ようなサーブを打つ時って、この押さえ付けて打つ
アンダースピン系サーブを使う。
そんなに速いサーブじゃないんだけど、コンパクトに打つから
コースも読みにくいしアンダースピン系特有の伸びもあって、
意外とスピード出ていないのにエースが取れたりするのだ。
 
試合会場で楽ちんそうに安定したサーブを入れ続けている
人を見掛けたら、ちょっと観察してご覧。
軸足よりも前にボールを投げてクイック気味に押さえ付けて
打っている人はアンダースピン系サーブの人。
しっかり軸足とラケットダウンでタメを作ってパワフルサーブや
トップスピン系サーブを打つことも重要だけど、労力少なくて
伸びがあり、しかも安定感あるアンダースピン系サーブも
覚えておいて損はしないよ。

どう失敗を繰り返すか

[考え方] 投稿日時:2013/04/15(月) 14:53

試合で負けた時の反省って色々あるんだけど、
自分のプレーの内容で反省するときって大きく二つに
分けられる。
一つは「なんであの時、あれをやらなかったのか」という
「出来なかった」という反省と、「余計なことをしてしまった!」
という「やりすぎ」の反省。
人間である以上失敗することは避けられないから、
失敗することに恐れないでプレーしてもらいたいんだけど、
どうせやるならこの二つの失敗はどっちがマシなんだろう。
 
よくあるのは、まず「思い切ってやってみました!」と
やり過ぎってくらい自分の課題のプレーにチャレンジして、
その結果、見事なほど失敗に終わる展開。
自分のテニスを進化させて新たな武器を手に入れたいと
意気込んでいる時はこういう失敗をするんだけど、その割には
手応えがないどころか、以前よりも簡単に負けやすくなってしまって
いる感じに陥りやすい。
そして、それを繰り返しているうちにと段々不安を感じ始める。
すると一転、今度は躊躇して何も出来ないプレーになって
しまうという展開になっていきやすい。
 
一つのことに専念した方が集中できるから、色んな新しいことを
加えて混ぜていくって凄く難しいことなんだよ。
でも、だからと言ってそんなことじゃいけない!!
前へ進まなきゃ!!
ワンパターンから卒業して色んなことを躊躇しないで思い切って
やれっ!・・・ということで、失敗するなら「やりすぎ」の失敗の方を
どうせなら勧めたいって言いたいところだけど、バカみたいに何も
恐れずやりまくるってのも違うと思う。
色んな新しいことは積極的にトライした方が良いんだけど、やっぱり
その新しいプレーを自分の今までのテニスに混ぜる時は、
がむしゃらにし続けるというより、何をどこでどう使うかきちんと
事前に計画立てて、パターン化させながら実行しなきゃいけないのだ。
 
具体例を言うと、例えばストロークのプレーばかりでテニスを
していた人が、ネットプレーを混ぜていきたいと思ったとする。
でもストローク主体だったそれまでの自分のテニスにボレーを
混ぜたらどうなるかと言うと、攻撃力は若干上がるけど、大抵それ以上に
まず安定感が無くなり粘り強さが損なわれてしまいやすい。
プレー中に選ぶものがストロークだけだったのが、ボレーに出ることも
選ばなきゃいけなくなったことで、その判断力も磨かなきゃいけないし
そうなるとストロークへの集中力も低下してしまうからね。
 
それでもがむしゃらにネットへ出まくり続けなきゃ・・・って思って
頑張る人も多いが、出ることは出るんだけど、がむしゃらじゃなくて
そこでどういう風に出るのかを事前にきちんと決めてから
また次のトライをすることが大事なんだよ。
例えば、どのくらい浅いショットの時に出るのか、どこにアプローチして
出るのか、同じ場所にアプローチし続けるのか、それとも変えていくのか
何の球種で出るのか、球種も変えていくのか、その後のボレーは
オープンコートなのか、そのボレーのスピードはどのくらいなのか・・・。
 
もちろん新しいことにトライするんだから、分からないことは多い。
でもだからと言って、勢いだけで突き進む訳にはいかない。
分からなくても、まずは想像だけで良いから計画を立てて実行しよう。
そうするとダメだった時に「予想とは違った」ということで修正しやすいし
反省もしやすいのだ。
一番マズイのは何も考えずにボレーに出まくって、それで手応えが
得られないからって「もうネットへ出ない」ということになること。
もちろん実行する前に考えすぎて怖気付くのもダメだけど、新しい
ことに思い切ってトライするんだったら、勢いだけじゃなく
相手の状況、自分の状況をきちんと加味しながら思い切って
前へ一歩一歩進もうとすることだよ。
 
ということで、失敗するなら「やらなかった」というのと「やりすぎ」と
というのと、どちらがマシかと言うと「やりすぎ」の方がまだマシ。
ただし、頭を空っぽにしてやり続けるんじゃなくて、慎重に慎重を
重ねながらやり続ける・・・ということだね。
「出来なかった」って言う人は、「やらなくても良い」という余計な
選択肢をいつの間にか用意してしまっているんだよ。
やるなら、やれっ!

スペインでのホームステイ

[過去の思い出] 投稿日時:2013/04/08(月) 12:54

初めてスペインに行ったのは24歳の時。
ホームステイ先はラファエラという老婦人が一人で住むアパート
だったんだけど、ラファエラは英語が苦手だった。
それどころか、こちらが英語で会話しようとすると
「ここはアメリカじゃないのよ!」って怒るのだ。
一緒にホームステイしていたイタリア人の選手に通訳してもらい
なんとか食事のことやシャワーのことなど、生活面での必要不可欠な
ことは教えてもらったけど、イタリア人選手は何かと不在が多かったから、
俺とラファエラでの生活という時間が殆どだった。
 
ラファエラはとにかくよく怒った。
英語しか話せないことにも怒ったし、家の中での服装にもうるさかった。
冷蔵庫のオレンジジュースを朝ごはん以外に飲んだことも
怒られたし、部屋が散らかっていることも、シャワーの使用時間が
長いってことも小うるさく言ってきた。
毎日毎日、イライラしながら俺に文句を言ってくる。
テニスの練習でヘトヘトに疲れているところで、ギャーギャー
言われ続けるとホントに頭に来る。
頭に来るから必死で覚えたてのスペイン語で言い返してやった。
 
でもラファエラの性格なのか、スペイン人の特徴なのか、
すぐに怒るんだけど、次の瞬間途端に機嫌が治ったりする。
言いたい事を大声で言い切ったら、何事もなかったようになるのだ。
最初は戸惑ったけど、それが分かると小言を言われることも大して
苦にならなくなってきた。
だから彼女のことを嫌いになることは一度もなかった。
 
嫌いになるどころか、ラファエラにはとても感謝していた。
それは彼女の料理がとても美味しくて、毎晩それが楽しみだったから。
ちょうどホームステイしていた時期は自分のテニスのプレーが上手く
行かず、オンコートでは精神的にも辛い日々を送っていた。
ハードな練習が終わって、帰りの送迎のワゴンから外の景色を眺めながら
ラファエラのアパートに帰る時にはいつも、日本に帰りたいってことと、
今夜のラファエラの晩御飯のことを考えていたのだ。
 
ラファエラの料理は毎回必ず、前菜、メイン、デザートと3回に
分かれて出てくる。
いわゆるコースってやつだ。
前菜と言っても、そこで大量のパスタやパエリヤが出てくる。
チーズやサラミがたっぷりのサラダの場合もあったね。
それだけでも日本だったら余裕で晩御飯が終わってしまうほどの
ボリュームなんだけど、それを食べ終わったあとに肉や魚の
メインディッシュとなるのだ。
デザートはラファエラの手作りケーキやプリンの場合もあれば
フルーツの時もあるし、ヨーグルトのみってこともある。
ワインと食後のコーヒーがあれば最高だったけど
お酒もコーヒーもそう言えばラファエラは口にしなかった。
それでも最高の晩ご飯を腹いっぱいラファエラは食べさせて
くれたのだ。
 
食事の席では常に「今日の練習はどうだったの?」
「今日のランチは何を食べたの?」ってラファエラはずっと俺に
質問をしてきた。
「今日はね、コーチにこう言われたよ」
「今日のランチは、うさぎを食べたんだよ」
スペイン語で会話が出来るようになってきても、相変わらず
ラファエラのイライラは続いたが、笑顔も多くなってきた。
 
そんなラファエラのアパートでのホームステイは、結局半年経った時に、
他の日本人選手とアパートで自炊しながら共同生活する話が
持ち上がって終わることに決まった。
その頃にはラファエラと色んな話をスペイン語で会話出来るように
なっていた。
アパートを出る話をラファエラに伝えた数日後、ラファエラから彼女が
毎週日曜の朝に行くカフェの話を聞かせてもらった。
泊まっている選手たちに朝ご飯とランチを用意しなくていい日曜日は
彼女が一番のんびりできる時間。
そんな日曜の朝は彼女のお気に入りのカフェへ、新聞と広告を大量に
持って行ってのんびりと過ごしているらしい。
「そこのクロワッサンはとても美味しいから、トモも行ったほうが良いわよ」
 
誘いなのかどうかは分からないけど、その次の日曜日の朝、俺も
教えられたカフェに行ってみた。
すると、ラファエラは「待ってました」って表情でニッコリ笑って
迎えてくれた。
でもそのまま彼女は俺が隣に座ってもずっと新聞を読んだまま。
なので俺も隣で小説を読んだり日記を書いたりしながら一緒に過ごした。
次の週の日曜日も同じように二人でカフェにバラバラで行き、一緒の
テーブルでそれぞれ自分の時間を過ごした。
その次の日曜日、俺はラファエラのアパートを出た。
彼女は朝、俺からアパートの鍵を受け取ってから一人でカフェに行った。
 
彼女との半年間の生活は数年間のように感じた。
その最初の半年はテニスに慣れるにも、スペインという国に慣れるにも
とても重くて濃い時間だったんだけど、そこでラファエラのアパートに
滞在できたことは本当に幸せだった。
単なる優しいおばあさんではなく、イライラしてすぐ怒るんだけど
最高に料理が上手くて、そして実はじっくり付き合うと根が優しいってことが
俺に生活の刺激と活力を与えてくれた。
ラファエラは今もまだ毎週日曜日はあのカフェでクロワッサンをつまみながら
新聞を読んでいるんだろうか。
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