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てにすまん 高西ともブログ 2012/9/27

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俺はスペイン帰りのコーチだ!

[過去の思い出] 投稿日時:2012/09/27(木) 10:40

24歳の時、一年間スペインで選手活動をした。
その間もテニスコーチの会社には在籍していた。
ありがたいことにこの会社は一年間の休暇をくれたのだ。
しかもそれだけじゃなく、スペインでの活動費用も
無利子で貸してくれたのだ。
でも当然その分、会社は俺の仕事に期待をしていて、
帰国後は会社の系列スクールでも一番大きくて、選手活動が
活発な昭和の森テニスクラブに配属先は決まった。
 
そこではもちろん一般のスクールコーチもやったんだけど
主に、若手のコーチや選手を育成するアカデミーと
将来テニス選手を目指す小学生を中心にしたジュニアの
選手育成チームのチーフコーチとなる。
会社の期待に応えようと、俺も頑張ってスペインで学んだことを
活かせるよう全力でレッスンを行なったよ。
 
スペインでは色々ともがき苦しんだ時期もあったが、最終的には
大きくジャンプアップすることが出来たし、帰国後も試合で結果も
出始めていたから、俺のスペインでの経験や学んだ考え方には
絶対的な自信を持ってジュニア選手の育成に取り組んだ。
練習のメニューやトレーニングの組み方、テニスの上達の
仕組みなど、徹底して子供たちだけじゃなく一緒に行うコーチ達、
そして親たちにも、俺のやり方を自信持って語った。
そのおかげで皆、大きな夢を描いて一生懸命頑張って
くれた・・・ように見えたんだけど、俺はそこで大きなミスを
犯していたんだ。
 
初めて担当する子供達やその親に対して、自分のコーチングや
テニスに対する考えを述べる、これはとても重要なこと。
でも、知らず知らずそれまでやってきた子供達の
テニスを否定するようなことをやっていたのだ。
もちろん、俺の口から「今までやってきたやり方は間違っている!!」
という言葉を言ったことはない。
でも、子供達やその親たちには、スペインでやってきたテニスの
素晴らしさを語るばかりで、これまでやってきた事に触れないというのは
今までのやり方、そして日本のやり方は間違っている・・・と
受け止められるのだ。
そして「日本のやり方」とは前任のコーチ達のことに繋がるんだよ。
 
俺がスペインから帰ってくるまでは、当然違うコーチが
アカデミーもジュニアも担当として一生懸命頑張って教えていた。
その彼らも、全力で取り組んで子供達をここまで成長させてくれた。
子供達はそのコーチ達を信じて、それまでテニスを一生懸命
頑張っていたのだが、そこで「スペイン帰り」という聞こえの良い
肩書きで、しかも現役選手である俺が担当となり、そこで
「このやり方、いいでしょ!」と熱く語ると、そりゃ従ってくれる。
だから子供達は素直に頑張ってくれた。
頑張ってくれたんだけど、そのうち子供達がレッスン中に話す
俺との会話の中に前任のコーチのことがチラホラ出てくるようになった。
「前のコーチがこう教えてくれたんだけど、それやっていいの?」
いつの間にか、子供達は前のコーチが教えてくれたことを
しちゃいけないのかなって思うようになっていたのだ。
これはショックだった。
子供達にも前任のコーチにも本当に申し訳ないって思ったよ。
 
テニスって積み重ねが大事。
多くの指導者とか尊敬する選手に出会って、そこで新しい技術や
情報を教えてもらったとしても、それまでのテニスを捨ててはいけない。
また一つ引き出しを作り、それにより選択肢を増やすという形で
成長していかないといけないし、またその選択肢を選んで使い分けが
出来る選手にならないといけない。
スペインから帰ってきた俺も、スペインのテニスを熱く子供達に
語るだけではなく、日本でそれまでずっと頑張り続けた彼らに、
今までどういうテニスをしようとしてきたのか聞いてあげることと、
そこに俺は、何を加えてあげられるかという話をしないといけなかった。
これからの道を作ってあげるつもりが、いつしかそれまで子供達
が前任のコーチとで共に歩んで来た道までぶっ壊そうとしていた。
 
レッスンは選手が主役。
コーチである俺がいつの間にかスペインでやってきたことで
有頂天になり、いつしか主役を気取っていたんだ。
よくよく考えると、その時の俺の考えも、スペインで培ったテニスでも
あるけど、その下にはずっと日本でやったことも、アメリカで
学んだことも積み重なってるんだよね。
コーチをやっている人には、そういうことを考えてもらいたいし
コーチに習っている選手は、今までの自分の積み重ねを全て
活かせるようになってもらいたいもんだ。