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てにすまん 高西ともからのメッセージブログ
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隣のコートで大発見![てにすまん 高西ともブログ]
投稿日時:2013/02/08(金) 11:09
現役時代、在籍していたテニスユニバースを退職した時、
まず困ったことは練習場所と練習相手の確保だった。
それまで練習していた職場のテニスコートが使えなくなった
から、近くの市営コートなどを借りるなどしたんだけど、
選手仲間がホームコートとか大学の部活に混ぜてもくれて
なんとか練習環境を作ることが出来た。
その中で一番お世話になったのは、立川ルーデンス。
そこに在籍していた土屋選手にいつも練習を誘ってもらった。
俺よりもランキングはずっと上にいた土屋選手との練習は
とても勉強になったんだけど、もう一つ大きな収穫があった。
それはよく隣のコートで打っていた安藤将之選手のプレーを
見られたこと。
日本でもトップクラスでプレーしていた安藤選手だけど、その当時は
もう試合出場数も減らして主に選手のコーチをしていたから、
隣で打っていた安藤さんは、だいたい選手のヒッティングとして
コートに立っていた。
その練習は黙々と相手選手と打ち合っていることが多かったんだけど
ショットの質の高さと、その質を維持させる安定感がとても素晴らしく
思わず何度も見とれてしまったもんだ。
土屋選手のプレースタイルは主にネットプレー。
じっくりストロークで打ち合うというより、隙あらばササッと
前に出てくるタイプだったので、淡々とストロークで打ち合う安藤選手と
違って、ラリーのペースは速いしショットもその都度変わってくる。
そういったテニスも重要なんだけど、当時俺が課題にしていたのは
安藤選手的な淡々と相手と打ち合えるストロークラリー。
その上手さの秘訣はどこにあるのか、土屋選手と練習しながらも
ずっと隣のコートを観察していた。
そこで感じたことはフットワーク。
相手が打ってくる色んなボールに対して、同じポジションの
入り方をしている。
細かく早いステップで的確にボールへ近づくから安定感が
損なわれないんだけど、早い段階で準備に取り掛かることも
その安定感の大きな要因となっている。
となると、その準備の早さが全てにおいての重要なヒントに
なっているように思えたんだよね。
で、その早い準備を作り出しているのが・・・声だと思った。
黙々とラリーしている安藤選手、打ちながら声を出すんだけど
よくよく聞くと自分が打つ瞬間だけじゃなく、相手が打つ瞬間にも
小さくだけど相槌を入れているような声が聞こえる。
ということは、声って自分が打つだけじゃなく相手が打つ瞬間にも
出した方が良いのか??
そう思って、隣で安藤選手のラリーを見ながらこっちもまずは声から
真似してみた。
その結果、相手が打つ瞬間もこちらが声を出すようにすると、
相手とのラリーのリズムと呼吸のリズムが合うようになるので、
プレーに対してとても集中出来ることが判明。
特に相手が打つ瞬間、ギュッと自分の意識が相手に集まり、驚く程
スムーズにボールへ対応できるようになったのを感じたのだ。
それ以来、自分のテニスにその声の出し方を取り入れた。
その結果、試合結果も良くなったし、ランキングを更に上げることが
出来たのだ。
もちろん結果が良くなったのは安藤選手の声の出し方だけじゃない
だろうけど、それくらい自分のプレーにすんなりマッチしたんだよ。
大きな発見だったね。
皆も、自分が打つ瞬間だけじゃなく、相手が打つ瞬間も声を
出して呼吸をしてみよう。
それから、「上手いな」って思う選手を見付けたら、その選手の
上手さや強さのコツを見抜けるようにしてもらいたいね。
まず困ったことは練習場所と練習相手の確保だった。
それまで練習していた職場のテニスコートが使えなくなった
から、近くの市営コートなどを借りるなどしたんだけど、
選手仲間がホームコートとか大学の部活に混ぜてもくれて
なんとか練習環境を作ることが出来た。
その中で一番お世話になったのは、立川ルーデンス。
そこに在籍していた土屋選手にいつも練習を誘ってもらった。
俺よりもランキングはずっと上にいた土屋選手との練習は
とても勉強になったんだけど、もう一つ大きな収穫があった。
それはよく隣のコートで打っていた安藤将之選手のプレーを
見られたこと。
日本でもトップクラスでプレーしていた安藤選手だけど、その当時は
もう試合出場数も減らして主に選手のコーチをしていたから、
隣で打っていた安藤さんは、だいたい選手のヒッティングとして
コートに立っていた。
その練習は黙々と相手選手と打ち合っていることが多かったんだけど
ショットの質の高さと、その質を維持させる安定感がとても素晴らしく
思わず何度も見とれてしまったもんだ。
土屋選手のプレースタイルは主にネットプレー。
じっくりストロークで打ち合うというより、隙あらばササッと
前に出てくるタイプだったので、淡々とストロークで打ち合う安藤選手と
違って、ラリーのペースは速いしショットもその都度変わってくる。
そういったテニスも重要なんだけど、当時俺が課題にしていたのは
安藤選手的な淡々と相手と打ち合えるストロークラリー。
その上手さの秘訣はどこにあるのか、土屋選手と練習しながらも
ずっと隣のコートを観察していた。
そこで感じたことはフットワーク。
相手が打ってくる色んなボールに対して、同じポジションの
入り方をしている。
細かく早いステップで的確にボールへ近づくから安定感が
損なわれないんだけど、早い段階で準備に取り掛かることも
その安定感の大きな要因となっている。
となると、その準備の早さが全てにおいての重要なヒントに
なっているように思えたんだよね。
で、その早い準備を作り出しているのが・・・声だと思った。
黙々とラリーしている安藤選手、打ちながら声を出すんだけど
よくよく聞くと自分が打つ瞬間だけじゃなく、相手が打つ瞬間にも
小さくだけど相槌を入れているような声が聞こえる。
ということは、声って自分が打つだけじゃなく相手が打つ瞬間にも
出した方が良いのか??
そう思って、隣で安藤選手のラリーを見ながらこっちもまずは声から
真似してみた。
その結果、相手が打つ瞬間もこちらが声を出すようにすると、
相手とのラリーのリズムと呼吸のリズムが合うようになるので、
プレーに対してとても集中出来ることが判明。
特に相手が打つ瞬間、ギュッと自分の意識が相手に集まり、驚く程
スムーズにボールへ対応できるようになったのを感じたのだ。
それ以来、自分のテニスにその声の出し方を取り入れた。
その結果、試合結果も良くなったし、ランキングを更に上げることが
出来たのだ。
もちろん結果が良くなったのは安藤選手の声の出し方だけじゃない
だろうけど、それくらい自分のプレーにすんなりマッチしたんだよ。
大きな発見だったね。
皆も、自分が打つ瞬間だけじゃなく、相手が打つ瞬間も声を
出して呼吸をしてみよう。
それから、「上手いな」って思う選手を見付けたら、その選手の
上手さや強さのコツを見抜けるようにしてもらいたいね。
テニス泥沼化計画[てにすまん 高西ともブログ]
投稿日時:2013/02/03(日) 09:43
試合中、泥沼状態になることがある。
何やってもスッキリ上手くいかないけど、相手も同じで
膠着状態。
我慢のテニスをしないといけないこの時間帯は、多い少ないの
違いはあるだろうけど、意外とどの試合にもあるんじゃないかな。
そう考えると、「泥沼状態にならないようにするためには」という
ことを考えながら普段からテニスをするんじゃなくて、むしろ
「泥沼状態をどうプレーするか」を考えないといけないし、逆に
強い相手や同レベルの相手との対戦なんかは、泥沼状態から
良い形で抜け出した方が勝利を得られるわけなんだから、
率先して泥沼状態に試合を持ち込むくらいの意識があった方が
良いんだよ。
安定した試合内容でトーナメントを勝ち上がっていく選手も
一見、危なげなく6-2・6-1とかで楽勝を続けているように見えても
実は毎回試合の中で、そういう泥沼状態を一瞬だけでも
経験していたりする。
でもそこからの抜け出し方が分かっているから、焦った様子も
見せないし、悩んだ表情も見せないのだ。
そもそも、試合には泥沼状態が付き物だと最初から分かっているし
選手によってはわざと泥沼状態に持ち込むタイプもいるくらいだからね。
俺なんかもそういうタイプだったし。
だから泥沼状態に陥ることを避けようとしたり、そうなった場合に
イライラして感情的になるようじゃ、自分の実力は絶対に発揮出来ない。
でもそこで泥沼状態を良い形で抜け出すには、それなりの泥沼状態
必勝法を持っていないといけないよね。
まず欲しいのは、泥沼で互いに思い切って攻撃できないの
だから、長いラリー合戦となるでしょ?
だったら一番シンプルに、永遠に相手とラリーを続けるという
強い意思を持つことだね。
互いに決め手が無い状態だから、結局ポイントとなるのは相手のミス。
ミスするまで永遠に繋ぎ続ける覚悟がないといけない。
でもやっぱりそれだけではダメな時もある。
相手もその作戦を真似してくるからね。
そうなったら、相手を左右に揺さぶったり、チャンスならネットプレーを
狙ったりして攻撃をしないといけないんだけど、大事なことは
泥沼状態なんだから「決める」なんて大それたことを考えて攻撃しないこと。
あくまでも「相手からミスをもらう」という目的でオープンコートに揺さぶったり
ネットに出てプレッシャーをかけるのだ。
泥沼状態は特に「早く決めて終わりたい」という気持ちが強くなるけど、
そもそも泥沼なんだから、あくまでも泥臭さに徹して欲しいんだよ。
確かにムチャクチャ強くなれば、泥沼状態が無く試合を
進められるかもしれないけど、それは相手がムチャクチャ格下だった場合。
結局強くなれば、その分試合のグレードも上がるし、勝ち上がれば
相手の方が格上になったりするんだから、泥沼状態から卒業する
ことは永遠にない。
だったら、もっと普段から泥沼状態になった時のことを想定した練習を
しないといけないし、自ら相手を泥沼状態に引きずり込む作戦なんかも
考えておかないとダメなんだよね。
強い選手のテニスはカッコイイけど、あれは泥沼状態になっても、
迷わず、うろたえず、スマートにその状態を対処して抜け出すから
カッコイイんだからね。
永遠にラリーを続ける意思、ちゃんと持っているかな?
泥沼状態を楽しんでプレーしてね。
何やってもスッキリ上手くいかないけど、相手も同じで
膠着状態。
我慢のテニスをしないといけないこの時間帯は、多い少ないの
違いはあるだろうけど、意外とどの試合にもあるんじゃないかな。
そう考えると、「泥沼状態にならないようにするためには」という
ことを考えながら普段からテニスをするんじゃなくて、むしろ
「泥沼状態をどうプレーするか」を考えないといけないし、逆に
強い相手や同レベルの相手との対戦なんかは、泥沼状態から
良い形で抜け出した方が勝利を得られるわけなんだから、
率先して泥沼状態に試合を持ち込むくらいの意識があった方が
良いんだよ。
安定した試合内容でトーナメントを勝ち上がっていく選手も
一見、危なげなく6-2・6-1とかで楽勝を続けているように見えても
実は毎回試合の中で、そういう泥沼状態を一瞬だけでも
経験していたりする。
でもそこからの抜け出し方が分かっているから、焦った様子も
見せないし、悩んだ表情も見せないのだ。
そもそも、試合には泥沼状態が付き物だと最初から分かっているし
選手によってはわざと泥沼状態に持ち込むタイプもいるくらいだからね。
俺なんかもそういうタイプだったし。
だから泥沼状態に陥ることを避けようとしたり、そうなった場合に
イライラして感情的になるようじゃ、自分の実力は絶対に発揮出来ない。
でもそこで泥沼状態を良い形で抜け出すには、それなりの泥沼状態
必勝法を持っていないといけないよね。
まず欲しいのは、泥沼で互いに思い切って攻撃できないの
だから、長いラリー合戦となるでしょ?
だったら一番シンプルに、永遠に相手とラリーを続けるという
強い意思を持つことだね。
互いに決め手が無い状態だから、結局ポイントとなるのは相手のミス。
ミスするまで永遠に繋ぎ続ける覚悟がないといけない。
でもやっぱりそれだけではダメな時もある。
相手もその作戦を真似してくるからね。
そうなったら、相手を左右に揺さぶったり、チャンスならネットプレーを
狙ったりして攻撃をしないといけないんだけど、大事なことは
泥沼状態なんだから「決める」なんて大それたことを考えて攻撃しないこと。
あくまでも「相手からミスをもらう」という目的でオープンコートに揺さぶったり
ネットに出てプレッシャーをかけるのだ。
泥沼状態は特に「早く決めて終わりたい」という気持ちが強くなるけど、
そもそも泥沼なんだから、あくまでも泥臭さに徹して欲しいんだよ。
確かにムチャクチャ強くなれば、泥沼状態が無く試合を
進められるかもしれないけど、それは相手がムチャクチャ格下だった場合。
結局強くなれば、その分試合のグレードも上がるし、勝ち上がれば
相手の方が格上になったりするんだから、泥沼状態から卒業する
ことは永遠にない。
だったら、もっと普段から泥沼状態になった時のことを想定した練習を
しないといけないし、自ら相手を泥沼状態に引きずり込む作戦なんかも
考えておかないとダメなんだよね。
強い選手のテニスはカッコイイけど、あれは泥沼状態になっても、
迷わず、うろたえず、スマートにその状態を対処して抜け出すから
カッコイイんだからね。
永遠にラリーを続ける意思、ちゃんと持っているかな?
泥沼状態を楽しんでプレーしてね。
佐藤充選手[てにすまん 高西ともブログ]
投稿日時:2013/02/01(金) 03:32
高校の部活を支援していて思うのは、それぞれ部活を頑張っている
皆に結果を出してもらいたいということ。
じゃあ、その結果は何かと言うと、もちろん戦績なんだけど
それだけじゃなくて、過去の自分を追い越して自分自身が成長する
こともそうだし、部活動を通して仲間を作ったり信頼関係を築くこともそう。
それから、精神的に成長することも「結果」を出したと言える。
とにかく、部活動で全力を尽くすということは、試合の結果を追い求め
続けることなのだが、戦績以上に多くの価値ある結果を得ることが出来る。
そしてその結果が卒業したあと、色んなことに生かされるのだ。
だから部活動を頑張った選手は、素晴らしいテニスの技術を得られる
ことで、その後のテニスでの活躍が期待されるだけでなく、その選手の
人生も大いに期待されるのだ。
そんな高校の部活動3年間を頑張り続けた姿を見せてくれた
選手が、先日一人亡くなった。
明治大学4年生の佐藤充選手。
充のテニスは、彼が高校の時、3年間ずっと見てきた。
だから彼の今後に大きな期待をしていたし、つい最近まで充から
「大学を卒業するまでにもう一度勝負しましょう!」って連絡を
もらっていたのだ。
そんな彼に対して「まだ負けないよ!」と言いながら結局実現
出来なかったことが悔しいというか、腹立たしくてならない。
充と最初に出会ったのは彼が東京の大成高校で1年生の時。
その大成高校のコーチとして就任した日に、いきなり質問攻めを
してきたのが充だった。
テニスの技術のことだけじゃなく、ラケットやシューズやウェア、
海外のこと等も、とにかくなんでも質問しまくる充はすぐにこちらの
懐にどんどん飛び込んできた。
遠征に行く車の中でもずっと喋っているのは一年生の充で、コーチの
俺とか監督や先輩達から「少しは落ち着けよ!」「うるさい!」
と怒られてばかりだった。
そんな充を連れて、JOPの試合やフューチャーズの予選を回った。
それまで同世代のテニス選手とばかり戦ってきた彼には、一般の
プレーヤーやフューチャーズで見る国内トップクラスの選手達は
衝撃だった。
「俺、もっと強くなります!」
フューチャーズの予選会場でボロ負けをした後
そう宣言していた充は更にイキイキとしていた。
一緒に同じ大会を回っていたので、充と対戦したこともあった。
荒削りなプレーで危なげなくこちらが勝利を挙げたが、しっかりと
打ち込む充のショットストロークだけではなく、サーブもボレーも
魅力的だった。
一緒に出場したダブルスでは充ばかりが相手ペアに狙われて
何も出来なくなり、泣きそうな表情を浮かべながらもがいていたのを
今でも覚えている。
とにかく喜びも悔しさも目一杯感じながら充は頑張っていた。
2年、3年と大きく彼は成長し、舞台も全国となる。
それでも相変わらず充は人懐っこい表情を見せながらコートに
立って練習をしていた。
大成高校ナンバー1としてプレーしていた彼に、もっと
ナンバー1としての自覚と威厳を持つように話をしたことがあるが
それでも充は充のままだった。
彼はあれで実は厳しさを持ち合わせていたし、もがきながら
苦しんでいたのだった。
大学に行った充とは殆ど会う機会も無く、たまにメールでやり取りを
するだけだったのだが、昨年の夏に明大明治高校でイベントを
行なった時に、隣の明治大学のテニスコートで練習をしていた充と
バッタリ再会を果たすことが出来た。
随分と体も鍛え上げられ、顔つきも変わって成長したと感じたが
やっぱり喋ると昔のままの充だった。
大学に入って色んな厳しさを経験したはずなのに、そういった苦労を
表に出すこともなく、楽しそうに彼は頑張っていた。
それが俺にはたまらなく嬉しかった。
そんな充を見てきたのに、これから彼の将来を期待できないのだ。
充はその屈託のない笑顔の中に強い気持ちを持っていたのに。
今までの頑張りがバネとなって大きく高く跳躍しようとしていたのに。
どうしても彼の存在を俺は忘れることはない。
彼の生きようとした分だけ、俺や彼の周りの仲間が頑張って
生きようって、そう思っても、なんかやっぱり違う気がする。
充よ、やっぱり充がいないとダメなんだよ。
高校の3年間、大学の4年間の頑張りを充はどうこれから
使いたかったんだろうか。
あまりにも悔しすぎる。
皆に結果を出してもらいたいということ。
じゃあ、その結果は何かと言うと、もちろん戦績なんだけど
それだけじゃなくて、過去の自分を追い越して自分自身が成長する
こともそうだし、部活動を通して仲間を作ったり信頼関係を築くこともそう。
それから、精神的に成長することも「結果」を出したと言える。
とにかく、部活動で全力を尽くすということは、試合の結果を追い求め
続けることなのだが、戦績以上に多くの価値ある結果を得ることが出来る。
そしてその結果が卒業したあと、色んなことに生かされるのだ。
だから部活動を頑張った選手は、素晴らしいテニスの技術を得られる
ことで、その後のテニスでの活躍が期待されるだけでなく、その選手の
人生も大いに期待されるのだ。
そんな高校の部活動3年間を頑張り続けた姿を見せてくれた
選手が、先日一人亡くなった。
明治大学4年生の佐藤充選手。
充のテニスは、彼が高校の時、3年間ずっと見てきた。
だから彼の今後に大きな期待をしていたし、つい最近まで充から
「大学を卒業するまでにもう一度勝負しましょう!」って連絡を
もらっていたのだ。
そんな彼に対して「まだ負けないよ!」と言いながら結局実現
出来なかったことが悔しいというか、腹立たしくてならない。
充と最初に出会ったのは彼が東京の大成高校で1年生の時。
その大成高校のコーチとして就任した日に、いきなり質問攻めを
してきたのが充だった。
テニスの技術のことだけじゃなく、ラケットやシューズやウェア、
海外のこと等も、とにかくなんでも質問しまくる充はすぐにこちらの
懐にどんどん飛び込んできた。
遠征に行く車の中でもずっと喋っているのは一年生の充で、コーチの
俺とか監督や先輩達から「少しは落ち着けよ!」「うるさい!」
と怒られてばかりだった。
そんな充を連れて、JOPの試合やフューチャーズの予選を回った。
それまで同世代のテニス選手とばかり戦ってきた彼には、一般の
プレーヤーやフューチャーズで見る国内トップクラスの選手達は
衝撃だった。
「俺、もっと強くなります!」
フューチャーズの予選会場でボロ負けをした後
そう宣言していた充は更にイキイキとしていた。
一緒に同じ大会を回っていたので、充と対戦したこともあった。
荒削りなプレーで危なげなくこちらが勝利を挙げたが、しっかりと
打ち込む充のショットストロークだけではなく、サーブもボレーも
魅力的だった。
一緒に出場したダブルスでは充ばかりが相手ペアに狙われて
何も出来なくなり、泣きそうな表情を浮かべながらもがいていたのを
今でも覚えている。
とにかく喜びも悔しさも目一杯感じながら充は頑張っていた。
2年、3年と大きく彼は成長し、舞台も全国となる。
それでも相変わらず充は人懐っこい表情を見せながらコートに
立って練習をしていた。
大成高校ナンバー1としてプレーしていた彼に、もっと
ナンバー1としての自覚と威厳を持つように話をしたことがあるが
それでも充は充のままだった。
彼はあれで実は厳しさを持ち合わせていたし、もがきながら
苦しんでいたのだった。
大学に行った充とは殆ど会う機会も無く、たまにメールでやり取りを
するだけだったのだが、昨年の夏に明大明治高校でイベントを
行なった時に、隣の明治大学のテニスコートで練習をしていた充と
バッタリ再会を果たすことが出来た。
随分と体も鍛え上げられ、顔つきも変わって成長したと感じたが
やっぱり喋ると昔のままの充だった。
大学に入って色んな厳しさを経験したはずなのに、そういった苦労を
表に出すこともなく、楽しそうに彼は頑張っていた。
それが俺にはたまらなく嬉しかった。
そんな充を見てきたのに、これから彼の将来を期待できないのだ。
充はその屈託のない笑顔の中に強い気持ちを持っていたのに。
今までの頑張りがバネとなって大きく高く跳躍しようとしていたのに。
どうしても彼の存在を俺は忘れることはない。
彼の生きようとした分だけ、俺や彼の周りの仲間が頑張って
生きようって、そう思っても、なんかやっぱり違う気がする。
充よ、やっぱり充がいないとダメなんだよ。
高校の3年間、大学の4年間の頑張りを充はどうこれから
使いたかったんだろうか。
あまりにも悔しすぎる。
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